TRONプロジェクト30周年特別対談

目﨑 祐史 氏
株式会社パスコ 代表取締役社長
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坂村 健
TRONプロジェクトリーダー

坂村 TRONプロジェクトは、組込みコンピュータのプロジェクトとして1984年から始まり、今年で30年が経ちました。最近では、組込みコンピュータが道路や橋梁にまで埋め込まれ、社会インフラの効率的な整備というような用途にまで広がってきました。そういうところでパスコとの接点が出てきました。地理空間情報は、ユビキタスコンピュータの応用分野で大変重要です。パスコさんとは2002年に産学協同のYRPユビキタス・ネットワーキング研究所を設立して以来、おつきあいいただいております。

目﨑 パスコの歴史を簡単にご説明いたしますと、終戦後に旧陸軍の測量部隊が米軍に接収され、米軍の一部として測量技術者が集められました。米軍の撤収後、米軍作業のマッピング業務に従事した70人が今のパスコの母体となり、1953年に創立しました。1960年に航空機を自分たちの手で飛ばせるようになり、航空写真から図化機を用いて様々な用途の地図が作れるようになりました。地図作成を中心に、お客様の仕事を理解し、様々な分野のコンサルティング業務やシステム開発業務を行ってまいりました。また、国内だけでなく、地理空間情報を基軸に積極的に海外に進出し、今に至っております。
当初、地理空間情報の取得は航空写真から始まりましたけれども、今では3次元地形を直接計測できる航空レーザスキャナ、人工衛星や航空機搭載のSAR(合成開口レーダー)といったものを活用しております。また、航空機以外にも車両に搭載したレーザスキャナやカメラで、膨大なレーザ点群や画像を取得し、高精度な3次元地形図を作成しております。海の中は音響センサであるソナーを用いて計測しております。さらに、人工衛星画像の受信施設も保有しており、そういったいろいろな道具を使って、必要に応じた精度の地理空間情報を構築しております。
最近では、画像に関する技術も大幅に進んでおります。たとえば、昔は人間が図化機等を用いて地物の3次元データを手作業で取得してきたものが、現在では数千枚の画像をコンピュータで処理をさせると自動的に3次元の地物が抽出できるというところまで技術が進んできております。
そう考えてみますと、私共パスコの進化は、非常にICT技術と連動しています。最新のICT技術や地理空間データの取得技術から、その時代で一番良いものを導入しては新しいサービスとして組み立てていくこと、その繰り返しをやっている企業であるとも言えます。

坂村 最初70人で戦後会社を作られて、60年を経た今、従業員の方も多くなっていると思いますが、いかがでしょうか。

目﨑 グループで約2,600人です。海外にも子会社があります。

坂村 私も12年程前から街中にICタグを埋め込んだり、いろいろなインフラを作って、自分が今どこにいるのか、行きたい所への最適なルートはどれなのかなどを自動的に検索するシステムの開発などを進めてきました。地図はまさにインフラですから、ユビキタスコンピューティングの応用を進展させるためには非常に重要です。

目﨑 その通りであると思います。先生のところで一緒にやらさせていただいて10年が経過しました。最初の頃の通信デバイスは今から見ると「昔はそんなだったの?」という感じでしたけれども、その頃から先生はタグをいろんなところに埋め込んで管理をしていくと言っておられた。その発想に非常に共感して、一緒にやらさせていただこうと考えたわけです。

坂村 ありがとうございます。地図もここ10年間ですごく進展があり、たとえば、日本の地図ですと国土地理院がまず最初に原型になるものを作りました。それを加工していろいろな地図が生まれてくるわけですけれど、今までは紙に印刷して見ていた地図が、ネットワークを通してスマホで見られるようになって、しかもその地図をGoogleがオープンな形で出し始めて、世の中が大きく変わってきました。Googleの偉いところはオープンにしたところです。タダで出したので、地図業界の方はビックリしたのではないかと思います(笑)。

目﨑 激震ですよね(笑)。

基準点に設置されたucodeタグをユビキタス・コミュニケータで読み取る様子

坂村 ただ、さらに次の世代のユビキタスコンピューティング、最近ですとIoT(Internet of Things)時代の地図としてはもう少し工夫しなければならないこともあります。特に、屋内地図に関してはまだまだというところがあります。
パスコと私共の研究所は、G空間プロジェクトをご一緒させていただいています。その対象地である東京は、特に複雑な地下街がたくさんあるので研究開発が益々必要となってきています。

目﨑 地下街で難しいのは、データの統合と測位です。地下街の情報は場所によって管理者がまちまちで、統合した形でデータがありません。一回自分たちの手で測量し直さなければダメなのです。手間は掛かりますが、「誰かがやらなければならないだろう」ということで、池袋の地下街を一番最初に取り組みます。また、測位の問題では、ucodeが埋め込まれたタグをいっぱい置くのもありますし、Wi-FiやBluetoothなどをいくつかを組み合わせれば、それなりの位置精度になるのかなと思います。一個だけというわけにはなかなかいかないと思いますね。

坂村 昔からよく言っているのですけれども、TRONプロジェクトではハードウェアはいろいろなものを使う。GNSSも使えばWi-Fi測位もBluetooth測位も電子タグも使う。けれどもユーザーから見たときには、一元的に見えるようにしようと考えています。そのためucodeが必要になりますね(笑)。地下街は管理者がいろいろ分かれています。同じように、道路なら国道もあれば県道もあるし、区道、市道、私道も、というときに、全部を1人の人が測量すれば良いのですが、それは無理です。そこで、それぞれの管理者が作成した地理空間データをシームレスにつながればいいんですけれど、なかなかそうは簡単にいかないですね(笑)。

目﨑 うまくいかないですよ(笑)。そのブレークスルーを、ucodeを使えばできるのではないかと思ってはいるのです。

坂村 現実的に考えると、誰か一人で全部やるのは難しいから、いろいろな人のデータをマッシュアップさせて連携させることによって、大きな目標に向かっていける仕組みがどうしても必要になります。

目﨑 その意味からすると、国でも考え始めたオープンデータが非常に重要なキーワードになるのではないかと思います。

坂村 つい先日、オープンデータを推進するために「オープンデータ流通推進コンソーシアム」が、一般社団法人「オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構」になり、実は私がそこの理事長になりました。内閣官房、総務省や経済産業省など、国の方々にも強くサポートしていただいています。何から何まで国がやるだけではなくて、オープンデータを推進する機構として、民間も同調して産官学民共同で進めていこうと考えています。しかしオープンするだけでなく、オープンされたものがこれとこれは違うものだとか、これとこれは同じものだとか、こことこことはつながっているとか、そういう仕組みが必要なのです。

目﨑 データがいっぱい並んでいるだけで、その構造が見えないと使いにくいことになってしまいますね。

坂村 そのためにも、ucode、uIDアーキテクチャをうまく利用していただきたいと思っています。すでにパスコでは、地下街などを測量したものをuIDアーキテクチャを使い、ucodeを付けていただいています。将来は、パスコだけでなく、他の人がやったところともつながるようにしたいと思っています。

目﨑 私もそろそろ何らかの飛躍が出てくる時代に入りつつあるのかなと思っております。その中でオープンデータが一つのキーワードだろうと強く感じています。最初のucodeは、モノに付けるというところから始まり、それにより場所の概念が拡張され、私共パスコとしても可能性が広がってきたのではないかと考えています。モノは必ず場所が付いている。それから情報も場所が必ず関係している。その情報はどの場所に関係しているかをきちんと捉えて、keyを付けておく。そのkeyとしてucodeを使うべきではないのかということです。この方向でこれから様々なブレークスルーが出てくるのではないかと思っているところです。

坂村 10年にわたり共同研究していただき、ありがとうございます。GNSSは位置の誤差が10mくらいありますし、Wi-Fi測位やBluetooth、BLE(Bluetooth Low Energy)が特定の場所を認識するのに役には立つのですが、やはり一番良いのは、電子タグで数10cm単位で場所が特定できるところです。ところが、そのためにはそのタグをどこに付けたのか、最初だけは精度の高い測量を行い正しくコンピュータに入れておかないとまずいのです。自由にタグを付けて、どこに付いたかが正確に分かれば良いのですが、なかなかそういう訳にはいかない。どうやったら初期の測量コストが安くなるのか、どうすれば簡単にコンピュータに入れられるのかを、「東京ユビキタス計画・銀座」で実験して徐々にわかってきました。
それに、もう1つ大事だと思っているのが、車椅子のための地図です。段差があると自力で登れなくなるので道路に段差があるなどの情報を書いた地図としてバリアフリーマップが必要になります。それをやろうとすると、今まで測量されてたものにプラスαで段差まで測る必要がでてきます。

目﨑 そのためには、高さ方向の精度は、cm単位の話になります。これはなかなか今までの手法をそのまま利用することは難しいですね。

坂村 結構コストが上がります。

目﨑 どうしても費用が掛かってしまいます。

坂村 今の地図をバリアフリーマップにしようとすると、段差を全部書くとか、勾配を測るとか、エレベーターがあるかとかまで記載しなければなりません。試算しますと、メインの道路用を作成するだけで1,500億円くらい掛かります。「1,500億円なら一気にやればいいのではないか」という話も出ましたけれども、問題は1,500億円かけて一回作成しても、次の日行ったら道路は変わることもままあります。道路は生きているんですね。私たちの生活空間は日々変わっていますから、1,500億円を毎年払うのは重たい話になっていきます。そこで、私が最近言っているのが、「オープン」という考え方です。最初のバリアフリーマップは費用を出して作らざるを得ないけれども、作成した後のメンテナンスをオープン方式で情報を公開して、みんなで参加することによってメンテナンスできないかと考えているのです。

目﨑 私も、多分、そういう方向に動いていくと思います。ある自治体では、道路に穴があいているとか、公園のベンチが壊れているとか、そういう情報を住民と役所が一緒になって集約する仕組みを作っていて、これが自治体の皆さんの間でインパクトを持って受け止められているのです。そういうことを、もっといろいろなレイヤーでやっていくことが重要かと思います。普段気が付いていることで、それを伝える方法が今ないのです。伝えて世の中のためになるのなら、ちょっとした作業ならば、みんなが情報提供してくれると思うのです。こういうところをうまく盛り上げていくのが重要だろうと思います。

坂村 維持管理の時代になり、あらゆるところで定例的に点検するとなったら点検コストが大変なことになります。よく使っている人とか、あるいは、歩いている人が見つけたときが、一つの点検だということでもコストが下がると思います。

目﨑 本当にそう思います。これからは、いろいろなモノにセンサーを付けていく時代になります。たとえば、車の自動運転の目的で、さまざまなセンサーが積まれていきますので、それで取得したデータをオープン化していく、という流れもあるのではないかと思います。東日本大震災のときには、道路が通れる通れないの情報を、GNSSカーナビのデータから提供した事例がありました。

坂村 いわゆるビッグデータ化したデータを解析してわかったのですね。

目﨑 はい、その通りです。それに携帯電話の位置情報の利用もありました。そういったものを使いながら、ビッグデータ処理をして有効に使ってもらおうというサービスが始まりつつあります。こういう方向はどんどん加速していくのであろうと思います。一方、社会の認知も必要な面が出てきます。

坂村 ビッグデータの利用に関しては、議論が必要だと思います。特に、ビッグデータのガバナンスとプライバシーに関してです。誰の権限でよいとするのか、大量に集めたデータは誰のものなのかなどの議論を飛ばしてしまうと、後々もめるのですよね(笑)。

目﨑 以前ビッグデータのガバナンスとプライバシーに関して話題になったことがありましたね。

坂村 ありました。もめないようにするためには、あらかじめ枠組みを作る必要があります。そういう可能性があるときにどうするのかを、事前に議論すべきなのです。私は、シンポジウムやTRONSHOWの中でも議論をしてきました。そのあたりは、今後も継続していきたいと考えております。

uIDアーキテクチャを活用した視閲管理システム(ベトナムでの実証実験)

目﨑 オープンデータを管理したりコントロールしたりする枠組みを考えたときに、このuIDアーキテクチャは、非常にピッタリくるのかなという気持ちを、私は持っています。

坂村 技術的にはuIDでうまくできるのですが、そのデータが誰のものかを技術が決めてくれるわけではありません。このデータは誰のものなのかとか、誰の権限でオープンにして良いのかというのは、制度とか、社会の問題として、哲学というか、この社会をどう運営していくかということで議論しなければいけないのです。たとえば、プライバシーは重要ですが、たくさんの人の役に立つ、パブリックで役に立つのなら、公開するのは、本人の意向がなくても良いのかダメなのかという議論です。結論を出すのは難しいと思いますが、逃げるわけにはいきません。
ビッグデータを集めるといろいろなことが分かってきます。ある特定の病気が特定の地域に集中して、その原因が水なのか、食べ物なのか、多くのデータから推論できます。それでも個人データが出ては困るのです。そのためには、具体的な個人が特定できないような仕組みも必要でしょう。

目﨑 その通りですね。たとえば、人が2人しかいない集落のデータが出れば、あの人とあの人という個人が特定できますよね。

坂村 絶対に分かってしまいます。だからこそ、先に議論をしないとダメなのです。
ところで、創業から60年経って、現在、パスコさんが最も力を入れてるテクノロジーは何でしょうか。

目﨑 テクノロジーやビジネスという観点では、地理空間情報のクラウドサービスです。今までのソフトウェア開発は、お客様の要請を全部聞いて、テーラーメードで作っていましたから、費用も高いし時間もかかっていました。現在、お客様の考えている仕様をこちらで決めて、開発したソフトウェアをクラウドサーバに置いて、それをいろいろなお客様に使っていただくことを目指しています。そうすることで、安い値段で品質の高いサービスが提供できます。われわれにとっても個々に開発するのに比べてコストは安くなりますし、お客様が最初10人だったのが100人になれば、増えた90人分の費用で、ネットワークの回線を太くしたりサーバを増強すれば、サービスの向上にもつながります。しかも、売り切りではなくて継続収入で、経営基盤として非常に安定することになります。そういうビジネスモデルに転換をしていくことを進めております。これは民間企業に向けたサービスでは、かなり進んでいます。ところが、官公庁や地方自治体などに向けたサービスは、情報セキュリティの問題でなかなか普及が難しい面がありました。そこで、インターネットとは完全に切り離された非常に安全なLGWAN(総合行政ネットワーク)の上に載せるサービスをわれわれ独自に開発して、現在、それを広く展開しております。地理空間情報の提供とソフトウェアをセットにして活用していただこうということで、全国の200数十の自治体に、ご採用いただけるまでに至っております。

坂村 従来型のコンサバティブなGIS(地理情報システム)は、全部クローズで、隣と隣がつながらなかったりする。そういうことからすると、それだけでも一歩前進ですね。

目﨑 昔は役所の中のいろいろな部門の人が、バラバラの地理空間データを使っていました。これでは不都合が起こり、徐々に、同じデータを使うようになってきました。まずは、庁内で同じデータを使っていただくことが第一ですね。

坂村 庁内でそういう状況なので、隣の市町村とは地理空間データの整合は全然だめですよね。さらに隣の県だともっと違うとか。同じようなことをやるのに、余りの非効率ともったいなさがありますね。

目﨑 インターオペラビリティを明確に確保して、同じものを使っていただくという方向に必ず進むと考えられます。

坂村 今はネットの時代です。民間のGoogleが皮肉なことに地図の共通基盤になってしまい、市町村がお持ちの機能の高いGISはクローズネットの中に入ってしまい、市町村が所有している地理空間データを使うことができない状況にあります。必要だと分かっているのに公開できない。そのようなことを行っている間に、どんどん新しいものが外国から入ってきてしまいます。どうして日本は自分達で変えていけないのですかね。

目﨑 最近、県単位で同じものを使うという動きはだいぶ活発化してきております。

坂村 どうして県単位で最初から同じものを使っていなかったのかと言いたくなりますね。そうすると、次は県と県をつなぐことになりますね。

目﨑 そうなると思います。最終的にデータがオープンという状態になったときには、そのデータをいかにたくさん持っているのかというのが重要になります。そこのところで、私共も力を出していけるのではないかと思っています。

坂村 もう一つ、オープンにする勇気、オープンにする心構えが必要ではないですか。調べてみると地理空間データはいろんなところにあったりするのに秘蔵されています。

目﨑 そこは、オープンにするデメリットばかりが目立ってしまうからだと考えています。たとえば、オープンにした地理空間データに間違いが見つかったときに、怒られるのではないかということです。

坂村 それは、日本でいつも言われることですが、間違いであると思います。なぜならば、そういうことを言ってたら永久にオープン化は絶望的でしょう。

目﨑 そうなのです。それだから、そのためにベストエフォートで考え、ある程度間違いがあるという前提で使うものであってもよいと思います。

坂村 市町村や国が出すものは絶対に正しくなければいけないという絶対神話は、私は良くないと思います。絶対ということは無理です。間違っている可能性がありますと言った上で出してくれるのであれば、今度は使った人の責任になります。このようなルールを日本が取れないのはおかしい。

目﨑 「間違いを見つけたら言ってくれたら嬉しいです」というくらいの感じだと思います。

坂村 そうしたらすぐ直しますよね。データを修正する体制ができていて、間違いがあるかもしれないけれどもオープンにしますと言った方が、もっと新しい可能性が広がると何故思わないですかね。

目﨑 オープンデータを使いたいと思っている企業はいっぱいあるわけです。日本全体の発展を考えたとき、絶対にやらなければならない話です。

坂村 今日ずっとお話していて、私たちのプロジェクトと合いますね(笑)。

目﨑 私は、社内で「いつまでも実証実験やってるのではなくて、早く社会を変えよう」と言っております。真剣にやっていかなければいけないと思っているのです。

坂村 ここ10年くらい実証実験をやっていたのですが、協力していただいてる国や市町村の方からは、「もう実証ではないだろう」「実用に行くべきだ」と言われています。課題は技術でなく制度というところまで煮詰まっています。そこで、良い契機になるのは、2020年の東京オリンピックが決定したことです。日本人は、ターゲットとする年が決まると「これはやるしかないな」と思うのです。実証から実用にちょうど2020年がいい年かなと思っているのです。東京オリンピック・パラリンピックに関しては、今年いろいろな組織が一挙に作られております。実際の活動は来年からだと思いますが、2020年に間に合わせるには、大体3年前にはできてないとまずいと思います。すると2017年が1つのポイントです。あと3年しかないですね(笑)。

目﨑 意外と時間がないものですね。

坂村 これからの3年間は、ものすごく忙しくなると思います。2020年の2〜3年前には、これは実証実験ではないという状態に持っていきたいと思っています。

目﨑 よく言われている「お・も・て・な・し」というキーワードとユビキタスの基本的な考え方は、非常にマッチすると思います。たとえば、いろいろな外国の方が来られて、いろいろな言語で表示をするときには親和性が高いです。こういったところでパーフェクトに使えるかどうかをやり遂げてみたいですね。

坂村 そうですね。「お・も・て・な・し」は、細かいことの集積です。一個一個はどうってことないのですが、たくさん集まってくると大きなインパクトを与えます。

目﨑 その通りですね。ウェブサイトのデザインから、使い勝手から全部効いてきます。

坂村 自分1人では全部できないから、いろいろな人と組む必要があります。私は、現在、「公共交通オープンデータ研究会」の会長をやっています。東京に乗り入れてる飛行機、電車、バスなどの公共交通機関の方達が集まって、どうやって公共交通をオープンデータ化するかの検討をしています。最近、東京メトロさんとオープンデータコンテストをやりました。当初は「先生、応募する人はいるのですか」と言われていましたが、驚くほどの応募でした。オープンデータに対して一般の方達が興味持ち始めたことを実感しました。機会があればパスコともご一緒にできればと考えています。
最後に、今後のTRONプロジェクトに、期待されること、何かあれば一言お願いします。

目﨑 オープンデータ化に向けて、uIDやucodeが情報のコントロールのところで、ますます使われていくのではないかと期待しております。それが起爆剤となり、地理空間情報の利活用が活発になることを切に祈っております。引き続き、ご一緒に歩んでゆきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

坂村 どうもありがとうございました。

TRONWARE VOL.150より再録